真理ってなんだろう?

何が正しく、何が間違いなのか?それを見極めるには「疑う」「考える」ことが必要だ。

世界の真実を知るための知識〜第一弾 原油価格の影響を知ろう〜

  • まとめ
    • 原油市場では下落が続いている。その主な理由としては、①中国など新興国市場の低迷、②原油の供給過剰、③シェールガスなどの登場。
    • その一方で天然ガスLNG液化天然ガス)なども相関関係があるので、価格が低下している。
    • 日本では、海運、空運などの原油が燃料となる業界が好調となり、逆に石油業界(貯蓄している石油の価値が下がるため)、資源に投資をしている商社にとって損失となっている。
    • LNGはスポット取引(短期取引)と長期取引に分かれているが、現在メジャーな長期契約では半年弱ほどのタイムラグが生じているため、現在の原油安をみると、LNGも輸入価格が低下していくと予想できる。
    • 国際的には、産油国であるイスラム国とロシアが大打撃を受ける。
    • 日本経済にとっては、原油安の恩恵を被るだけでなく、円安、低金利政策のメリットを受け、さらに独自の資源開発による経済効果が見込まれている。
 

 

原油価格下落の影響(JETRO
 
・原油価格は、2014年6月の水準からほぼ5割下落している。理由は、中国やインドなどのアジア新興国の景気低迷に伴う、需要の落ち込みと、米国におけるシェールオイル増産、昨年のOPEC減産見送りなどによる供給過剰である。
 
油価回復を阻む3要因
  • 囚人のジレンマ
    • 原油の生産を削減すれば業界全体の利益になるが、他社が減産すれば自社は減産しなくても良いのではないかと期待する。
    • 日量930万バレルの原油生産が続く。15年4月現在で米国の原油在庫は4億8,368万バレルを超え、過去最高水準となっている。
  • 隠れた「井戸在庫」の存在
    • 米国には井戸在庫状態の油井が約3000カ所あると言われており、石油開発企業は、ほとんどコストをかけずに日量100万バレルの原油をいつでも新規に増産可能である。
  • 先物取引などに用いる「価格ヘッジ」
    • 多くの石油開発企業は、生産した原油を1バレルあたり、80−90ドルで販売できるヘッジ契約を結んでおり、足元の原油安の影響を最小限に食い止めている。
    • 対して中小企業の場合は、低金利の資金を利用して手持ちの資金を上回る金額を動かす、いわゆるレバレッジかける形で事業を進めてきた。負債の返済資金を確保する必要があるため、減産には動きにくい。加えてシェール鉱区のリース契約は、生産を続けないと土地所有者からペナルティーを課せられる条件下にある。
    • 価格ヘッジも15年から16年にかけて底をつく。
  • 健全な企業かを判断する負債/資本比率(D/E比率)は1未満だが、石油開発企業の間にはこの比率が1を大幅に超えることころが十数社ある。
    • 事業統合が増える
  • エネルギー多消費型産業の好調は続く
    • ガソリンなど石油製品を生産する製油所、自動車業界、電力業界、化学品業界、輸送業界などは、油価下落によるプラスの効果が顕著。とりわけ、フィリップス66やマラソン・ペトロリアムなどの石油精製企業は軒並み巨額の利益を生み続けている。
  • 天然ガス業界
    • 原発が停止して以降、火力発電所で使う液体化天然ガスLNG)の需要が急増する我が国では、調達を原油価格に連動した割高な中東産LNGから市場価格準拠で安価な米国産LNGにシフトする取り組みが続けられている。
    • 日系企業が参画するフリーポート、キャメロン、コーブポイントの3カ所の輸出ターミナル建設は順調に進展している。年間8,000万トンという日本のLNG需要を踏まえると、世界全体で見た液化設備は過剰になっており、LNGの需要も緩み始めている。
 
 
  • 日本の石油業界の現状と動向
    • 平成21年に一度下落後、翌年以降からは回復傾向にある。
  • 現在の原油安の背景
    • ロシア(産油国)の力を弱めようとするアメリカとサウジ等産油国の思惑と中国経済の悪化が原因。
    • 原油価格が低下して株価が下がったのは石油業界。
  • 原油価格と為替、株価の関係
    • 原油価格の上昇は、原油を算出する国に取ってプラスの影響を与え、価格の下落は、マイナスとなる。
      • FXでは、産油国通貨としてロシアルーブルが代表的。一位のサウジアラビアの通貨はFXでは取引できないため。
      • ロシアルーブルに投資をする場合、原油価格が上がれば上がる、下がれば下がるという基本的な関係にある。また、原油以外でも、いわゆる「新興国通貨」や「資源通貨」は、原油価格が上がれば上がり、下がれば下がる傾向にある。
      • 原油を売買するときは「ドル」が使われる。「原油売り、ドル買い」でドルが値上がりする。新興国通貨をドルで買っていた投資家が「新興国通貨」を売って「ドル」を買い戻すという動きにつながり、その結果としてドルが上がり、新興国通貨が下がることになる。これが、いわゆる「リスクオフ」と呼ばれる動きで、原油に限らず、テロや戦争などがあった時も「ドル買い」が起こる
      • 新興国通貨」としては、豪ドル、NZドル、南アフリカランドトルコリラなどがあげられる。これらの通貨は、原油価格が上がれば上がり、下がれば下がる。
      • 一方で、逆に動く通貨もある。それは、「円、ドル」などの、「安全通貨」
      • リスク状態に対しての、「逃避先」になっているため、市場がリスクにさらされると、ドルに対しても円高になる傾向がある。なので、原油価格の上昇は、円、ドルにとってはマイナスに働く一方で、新興国通貨にとっては、プラスになる。
  • 原油価格が下落している要因(SBI証券マーケットレポート)
    • 人口の多い新興国の経済成長が鈍化しており、原油の需要拡大にブレーキがかかりやすくなっているため。
    • 英国の量的緩和が縮小から停止となり、その分ヘッジファンドなどに資金が流れにくくなっているため
    • 中東など従来の産油国が減産の意向を見せない上、シェール革命が進む米国で生産量が増えているため。
  • 原油価格下落のデメリット
    • 産油国の経済・財政に悪影響が及ぶ可能性
    • 米国株の下落要因となり、それが日本に波及する可能性<矛盾?>
    • 我が国の資源大手や総合商社・総合化学の一角に悪影響が及ぶ可能性
  • 原油価格下落のメリット
    • エネルギー輸入依存度の高い国にとっては、貿易・経常収支改善の要因となる。日本の天然ガスの輸入価格は、原油価格と連動するように決められており、原油価格の上昇が天然ガス価格の上昇につながってきた。東日本大震災意向、原子力発電所が止まり、発電に要する燃料を確保すべく、スポット価格で天然ガスを買いに行ったところも。価格を引き上げる方に作用していた。
    • こうした流れを受け、2010年度に5.3兆円計上されていた我が国の貿易収支は、2013年度に13.8兆円の赤字に転落し、その差19.1兆円の悪化につながってしまいました。その最大の要因は、22.2兆円も輸入が増えたからで、原油・粗油や液化天然ガスLNG)など、鉱物性資源の輸入が10.3兆円増えたことが響きました(図表6)。 

      ちなみに、2010年度から2013年度にかけ、日本の原油・粗油の輸入量は年2.1億キロリットル前後で変わらず、原油価格等でコストが5割超も上昇した結果、金額ベースで輸入拡大となりました。LNGについては、輸入量・価格ともに増加し、貿易収支悪化の大きな要因となりました。 
  • 米国の天然ガス輸入価格は2009年に大きく下落し、その後、他国、他地域のような上昇傾向から独立して横ばいの傾向にある。これは、米国に於いていち早くシェールガスが実用化されたためだと考えられる。
  • こうした天然ガスの輸入価格の国別の違いは、原油の場合は輸入価格にほとんど国別の差がない点と比較して印象的である。
  • アメリカなどと違い、日本や韓国はLGNを輸入する以外、ガスを購入する方法がないため価格交渉力がなく、事実上、売り手の言い値で買わざるをえない。
  • 一方で、日本の天然ガス輸入価格の高さを電力業界の怠慢によるものとする見方もある。競争力がない同じ条件下の韓国はロシアから日本の半値以下で輸入し、ガス輸出国に転じる米国とも安値で契約済み。その理由としては、原燃料費調整制度の存在。産ガス国が値上げしても、為替変動で輸入価格が上昇しても、上がった分を電気料金に自動的に上乗せできる制度がある。この制度は、実際よりも高い価格で買ったことにして差額を賄賂として使う余地があるということである。
 
原油価格とLGN価格のタイムラグ(2015年10月・日本エネルギー経済研究所
  • 国際石油市場における原油価格とLGN価格には、一定のタイムラグを伴う強い相関性がある。その理由は、長期契約に基づくLGN調達であり、その長期契約分が原油価格連動方式を価格決定メカニズムとして採用しているからである。
    • その決定方式の根本には、全日本平均原油輸入CIF価格をベースに、一定の係数や諸要素を盛り込むフォーミュラであり、係数や諸要素についてLGNの売り手と買い手が交渉を踏まえて合意する形になっている。したがって原油価格の決定を踏まえ、LNG価格が自動的に決まるわけであるので、強い相関を持つことは自明の理となる。
    • しかし、この相関には一定のタイムラグを共なう。我が国のLNG価格は5ヶ月程度の遅れをもってそれを反映するのが実態である。このタイムラグの存在の理由は2つの要因による
      • 第一に、フォームラに基づく決定の根本となるJCCそのものが、入着価格であるため、船積・輸送等に価格日数を要するため、日々の原油価格決定からのずれ込みが発生するため。これにより1ヶ月のズレが生じている。
      • 第二に、契約によって様々なバラつきがあるが、該当月のLNG価格決定について、3〜4ヶ月前のJCCを用いる等のメカニズムが採用されているため。
      • 結果として、日々の原油価格決定から、半年弱程度のタイムラグを伴って、LNG輸入価格は強い相関関係を持つ。これによって、日本のLNG輸入価格の動き、方向性を先読みすることが可能となる
    • 今後の原油価格の先行きには、低価格状況による米国原油生産の低下といった需給引き締め要因が存在する一方、イラン原油の市場復帰や世界経済のダウンサイドリスク顕在化といた需給軟化要因もある。
    • 実際のLNG輸入価格は、JCC連動で決まる長期契約LNG価格だけでなく、近年は存在感を高めてきたスポットLNG価格に寄っても影響を受ける。
 
LNGに関する調査(電源開発株式会社、四国電力株式会社)
  • LNGの特徴
    • アジア、欧州、北米という3地域に限定されており、そのうちアジア地域が全LNG取引量の7割以上を占めている。北米ではパイプラインによる天然ガス取引が主流であり、LNGは補助的な利用に留まっていた。
    • 世界の天然ガスの確認埋蔵量は約178兆m3であり、中東と旧ソ連諸国で7割強を占めている。国別では、ロシアが約46兆m3、イランが約27兆m3、カタールが約26兆m3となっており、この3カ国で55%を占めている。
    • 生産量及び消費量は約2.5兆m3であり、生産国では、ロシアが23%、米国22%、カナダ7%、イギリス4%となっている。消費国別では、米国が約6,560億m3と圧倒的に多い。
    • スポット取引:スワップを含めた1年未満の契約によるLNG購入としている。
    • LNGの全取引(輸入)のうち、アジア太平洋地域が71%、欧州が23%、北中米が残り6%。国別で見た場合、日本だけで51.8%をしめている。
  • LNGスポット取引の現場
    • 1998年までは、生産者側がLNGno余剰分を供給したいという欲望と、書いて側の短期的な需要増分を確保したいという欲望が合致してスポット取引が成立していた。最近では欧米を中心にLNGの価格差を利用した最低取引(アービトラージとしても利用されるようになっているのが特徴的である。
      • アービトラージ
        • 裁定取引。価格変動において同じ性質を持つ商品を、異なる2つの市場の価格差を利用して売買を行う取引。現物市場と先物市場とのギャップを利用する手法がある。いわゆる鞘取り。
          価格差を利用した「さや取り」を「アービトラージ裁定取引)」と呼びます。例えば、「現物市場で取引されている為替レート」と、「先物市場で取引されている為替レート」の、ギャップ(Gap)を利用して利益を出す手法です。
        • 異なる市場間における同一あるいは同種の商品の価格差を利用して、無リスクあるいは最小のリスクで利益を確定する取引。異なる市場とは、同じ証券を上場する二つの証券取引所や、同じ商品の現物市場と先物市場等を指す。たとえば、ある商品について現物が先物よりも割安で裁定の余地(裁定機会)がある場合、裁定取引者は現物の購入と先物の売却を同時に行うことで裁定取引を実行する。この取引は現物価格が上昇したり先物価格が低下することで市場が均衡し、裁定機会が消滅するまで行われる。その後、先物の清算日には現物価格と先物価格は当然等しくなるから、取引者はその時点で反対売買や決済を行い、裁定取引を解消する。
        • 2つのモノの値動きの関係に着目し、その価格差がいつもより変化したと判断したときに、割安と思う方を買い建てもう一方を売り建てる、または割高と思う方を売り建てもう一方を買い建て、価格差がいつもの水準に戻ったときに反対売買をして利益を確定させる取引手法を、裁定取引といいます。

          (1)2つの価格の動きに普段安定した関連性が見られ、(2)変化した価格差は再び元の水準に戻る、ということを前提とした取引方法です。
          値動きの関係に法則性が見られないもの同士ではうまく行きません。また、想定よりも長く価格差が戻らない場合や、逆に変化が著しくなる場合などに、損失が発生することがあります。
      • 他燃料スポット取引市場の発展状況
        • 国際石油市場におけるスポット取引の発展
          • 市場構造を変化させる「ショック」
            • 第一次石油危機では上流部門における原油の所有者がメジャーズから産油国へと移転し、石油市場の構造を大きく変えることになった。第二石油危機では、スポット価格の高騰に伴う産油コックの直接販売ルート拡大により、メジャーズによる垂直統合システムの崩壊が起こり、取引形態の多様化が進んだ。特に、イラン革命を機に起こした産油国側の行動(長期契約を自ら破棄してスポット販売に乗り出す)がスポット市場拡大の措置を形成した重要な出来事となった。
          • 市場支配力の低下
            • メジャーズ、OPECの支配力が弱まり、非OPEC産油国が現れ、需給緩和での石油市場の新規参入の増加は、結果としてプレーヤー間の競争を引き起こし、スポット販売を中心とする様々な形態での取引を活性化させる要因となった。
 
原油安でメリット・デメリットを受ける産業
  • メリット
    • 空運
      • ジェット燃料コスト低下
    • 海運
      • 燃料の低下
    • タイヤ
      • 原料
    • 鉄鋼
      • 原料(鉄鋼石、石炭)の価格低下
    • 農薬
      • 原料
  • デメリット
    • 石油
      • 在庫評価損、資源事業の収益悪化
    • 鉄鋼
      • 資源事業の収益悪化
    • 非鉄
      • 銅・ニッケルなど資源事業の収益悪化
    • 大手総合商社
      • 資源事業の収益悪化
      • 資源安でも比較的堅調だった大手総合商社の決算(2015年9月時点)
      • 円安でもなぜ商社は利益が拡大するのか?
        • 海外で1億ドル稼いでいる商社は、為替変動により、円安になると同じ1ドルでも円の価値が変わるので、1ドル17円の円安担った時は17億円の増益となる。
      • 包括利益が大きく増加
  • 国際関係
    • サウジの思惑
      • シェール潰し
        • 原油価格の下落により、シェールオイルの採掘を行っている約120もの上場企業の株価が大きく下落した。
        • シェールオイルの場合は、地域によてコストが違い、かつ原油価格が戻れば、あちこちで採掘が再開する。つまり、一度の原油安でシェールオイル企業を根絶するというわけにはいかない
      • ロシアの狙い撃ち
        • 天然ガスの価格は原油価格に連動するが、OPECに加盟していないロシアは自由に交渉できる。ロシアがOPECに加盟すれば、価格支配力が飛躍的に高まる。
        • ロシアはすでに壊滅的な被害を受けており、ルーブルの価値が下落している。輸出の7割を原油・天然ガスに依存しているためだ。
      • 中国への影響
        • 中国の国有企業はこれまでにリベア、シリア、イラクなどの世界各地の油田権益を買いあさってきた。それが原油安によって、投資回収ができずに大きな損失を計上することになった。
        • 中国国内は消費エネルギーの7割以上を石炭に依存しているため、原油価格の下落の恩恵はほとんど受けない。
      • 日本への影響
        • 原油消費国の日本にとっては大きな恩恵をもたらしている。原発事故以降、火力発電で補うために原油などの輸入が急増したが、急激な円安によって5兆円ほども削減できるという試算があるという。
        • 日本の独自のエネルギー源として注目されているのが、エタンハイドレートである。
        • さらに円安の影響で、海外での価格競争力がつき、経済が潤っただけでなく、訪日外国人も増えた。日本の金利は世界に比べて低金利であるため、海外の一流企業がメガバンクに殺到している。